人を中心にした“まちづくり”

色から見つける故郷の宝物・
色で調べる故郷の不思議

「地域の色・自分の色」研究会が血の池地獄に設置した「こども色博物館」の様子
(血の池地獄の赤い泥を使った子どもたちの染め物や書をはじめ、教材や研究成果も展示)

「地域の色・自分の色」研究会(代表 照山龍治・大分市)は、地域の未来を支える人材の育成と持続可能な地域づくりには、子どもたちと学校、家庭、地域が地域ぐるみで、地域の自然や歴史文化に関心を向け、その仕組みや成り立ちや関係性を知ることが大事だと考えた。その一方で、子どもたちをはじめ地域の多くの人たちは、地域の自然や歴史文化に関心がない、知らない、という傾向にあることも見えた。

この課題を解決するには、子どもたちと地域ぐるみで、綺麗な色から地域の自然や歴史文化に関心を向け、色の違いや色の変化などから、その仕組みや成り立ち、関係性を解き明かしていく「入門教材」と「探究教材」が必要だと考えた。そのため、公益財団法人前川財団の助成を受けて、別府市の幼稚園と小学校で検証実践を行いながら、入門教材「ふるさとのたからもの」と探究教材「ふるさとのふしぎ」を作成した。この2つの教材は、県立図書館をはじめ、別府市教育委員会や別府市立の全幼稚園と全小中学校の図書館に置き、その幼稚園と学校から活用に向けての意見をもらった。その中には、「総合的な学習や別府学に活用できる」、「興味から入門し、探究に繋ぐ教材である」、「色から学ぶことは、子どもたちにとっても興味を持ち易く、分かり易い」といった意見があった。合わせて、幼児教育施設に向けては実践記録「ふるさとのいろあそび」も作成した。

そして、子どもたちが実践活動で作成した作品は、教材や研究成果とともに、別府市の血の池地獄と鬼石坊主地獄に設置した「こども色博物館」に展示し、付箋紙に県内外の方から多くの意見をもらった。その中には、「良い取り組みです。こんなことができるあなた方がうらやましい」「地獄の泥染め驚きです。地域の資源を見直しました」といった意見もあった。

そこで、新たに見えてきたことがある。

それは、持続可能な地域づくりには、広い視野を持って、地域の宝物を掘り起こすことができる人材を育成することが大事だということである。

そのため、2022年度は、地域を超えて活用できる教材を作成し、異なる学校や地域の交流を通して、地域の中では当たり前として埋もれている宝物を掘り起こしていくこととした。

地域ならではの色に注目することが、
まちのネットワークづくりへとつながる

学習院大学 文学部教授 秋田 喜代美氏
(Sustainable Smart City Partner Programアドバイザー)

私は毎月の研究会に東京からオンラインで参加させていただき一緒に議論し研究を進めるお手伝いや冊子づくりへのアドバイスをさせてもらってきました。地域ならではの色に注目することで、子どもたちも教師も夢中になりその発信が保護者や地域の人を巻き込み、まちのネットワークづくりへとつながっています。この取り組みに共感し、他の地域との交流も始まりました。異なる地域が交流するからこそ、さらに自らの地域の良さがわかる取り組みになっていきそうです。こども環境学会(長野大会)にて、2020年度こども環境学会優秀ポスター発表賞、2021年度同学会活動奨励賞も、チームの皆で受賞させていただいた取り組みです。